言語聴覚士とうつ病：休職してから復帰するか？転職するか？

「仕事量が多い」

「嚥下練習してもすぐ誤嚥してしまい良くならない」

「動けるのに食べられないから家に帰れない」

日々直面するプレッシャーや感情的な負担もあります。患者との深いコミュニケーションを通じて成長を支える一方で、長時間にわたる集中力や思いやりが求められるため、ストレスが溜まりやすく、時にはメンタルヘルスの問題を抱えることもあります。

本記事では、言語聴覚士が経験する可能性のあるストレス要因、うつ病のリスク、そしてそれらに対処するための方法について解説します。

言語聴覚士の仕事内容

言語練習

言語練習は、言語聴覚士が患者の言葉の能力を向上させるために行うトレーニングです。これは、話し方や発音を練習したり、語彙を増やすなど、患者が言葉で自分を表現できるようにするための練習です。

言語聴覚士は、カードゲームや簡単な会話を使って、楽しく練習できるよう工夫します。また、家でできる練習方法を紹介して、患者が自信を持ってコミュニケーションできるよう支援します。言語練習は、患者のコミュニケーションの力を引き出すための大切な一歩です。

嚥下練習

嚥下練習は、食べ物や飲み物を安全に飲み込むためのトレーニングです。嚥下機能に問題があると、食べ物が気管に入ってしまい、誤嚥や窒息の危険があるため、言語聴覚士が嚥下練習を指導します。

この練習では、舌や喉の筋肉を強くするためのエクササイズや、食べ物を飲み込む正しい方法を学びます。また、食事中の正しい姿勢や、飲み込みやすい食べ物の選び方についてもアドバイスします。嚥下練習は、患者が安心して食事を楽しめるようになるために、とても大切なプロセスです。

職業ストレス

患者との長時間の対話

患者のリハビリが思うように進まないと、言語聴覚士は「もっと頑張らなきゃ」とプレッシャーを感じます。また、患者が心を開いてくれないときは、どうやってコミュニケーションを取ればいいのか悩むことも。

さらに、長時間の対話には高い集中力が必要で、他の仕事とバランスを取るのが大変です。こうした状況が続くと、言語聴覚士はストレスを感じやすくなるのです。

患者の回復への期待

患者自身やその家族は、リハビリによってすぐに成果が出ることを望むことが多いですが、実際には回復には時間がかかることがあります。このギャップが生まれると、言語聴覚士はプレッシャーを感じ、期待に応えようと努力します。

しかし、思うように進まないときは、自分の能力に疑問を抱いたり、患者の期待に応えられないことへの不安や罪悪感が生じます。こうした状況が重なると、言語聴覚士にとって大きなストレスとなります。

業務量の多さ

多忙なスケジュールや過密な業務は、リハビリセッション、患者の評価、書類作成、チームミーティングなど、多岐にわたるタスクをこなす必要があるためです。

患者一人ひとりのリハビリには時間とエネルギーが必要ですが、限られた時間内で多くの患者を担当することになると、言語聴覚士は自分のペースを保つのが難しくなります。結果として、業務の質を保つためのプレッシャーや、十分な休息時間を取れないことによる疲労が、ストレスを増大させます。

感情労働による疲労

言語聴覚士が患者やその家族の感情に寄り添い、共感し続けなければならないためです。リハビリの過程では、患者の不安や焦燥感、時には怒りや悲しみにも直面します。言語聴覚士は、こうした感情を受け止め、常にポジティブで支援的な態度を保つ必要があります。

しかし、感情をコントロールしながら仕事を続けることは、非常にエネルギーを消耗します。このような感情労働の負担が蓄積すると、言語聴覚士は疲労感を感じ、結果的にストレスにつながります。

燃え尽き症候群

過度の業務量や感情労働による疲労、患者の回復へのプレッシャーなどが積み重なった結果、情熱を失ったり、仕事への意欲が低下する状態です。

これにより、患者のケアに対する熱意が薄れ、仕事の質が低下することがあるため、言語聴覚士は自己評価の低下や無力感を感じることがあります。こうした状態が続くと、ストレスとともに、うつ病などのメンタルヘルスの問題にもつながる恐れがあり、注意が必要です。

うつ病の症状

一般的には持続的な気分の低下、興味や喜びの喪失、エネルギーの減少などが特徴です。日常生活でかつて楽しんでいた活動に対して無関心になったり、仕事や人間関係に対する意欲を失うことがあります。また、極度の疲労感や集中力の欠如、意思決定の困難なども見られます。

身体的な症状としては、食欲や体重の変化、睡眠障害（過眠や不眠）、頭痛や胃の不調などがあります。感情面では、自己評価の低下、自責の念、無力感、絶望感が強まり、最悪の場合は自殺念慮に至ることもあります。

社会的・職業的な影響も大きく、仕事に対する興味や責任感の低下、家庭内でのコミュニケーション不足など、生活全般に支障をきたすことがあります。これらの症状が2週間以上続く場合、うつ病の可能性が高いため、専門家による適切な診断と治療が必要です。

うつ病の予防と対処法

• 日常のストレス管理:
  • ストレスを減らすためのリラクゼーション法（深呼吸、瞑想、ヨガなど）を取り入れる。
  • 趣味や運動など、ストレスを軽減できる活動を習慣化する。
• 健康的な生活習慣:
  • バランスの良い食事と十分な睡眠を確保する。
  • 定期的な運動を行い、体と心の健康を維持する。
• ポジティブな人間関係:
  • 家族や友人との良好な関係を維持し、孤立を避ける。
  • 困難なときに支え合える信頼できる人とのつながりを大切にする。
• 仕事と生活のバランス:
  • 仕事の負担を軽減するために、休暇を取り、適切な労働時間を守る。
  • ワークライフバランスを意識し、無理のない働き方を心がける。
• 専門家への相談:
  • うつ病の兆候があるとき、あるいは不安を感じたときは、メンタルヘルスの専門家に相談する。
  • カウンセリングや心理療法など、専門的なサポートを受ける。
• 薬物療法:
  • 医師の診断のもと、必要に応じて抗うつ薬などの薬物療法を検討する。
  • 薬の服用は専門家の指示に従い、自己判断で中断しないようにする。
• 継続的なケア:
  • うつ病の治療は長期的なプロセスであるため、継続的なケアを受ける。
  • 定期的なメンタルヘルスチェックを行い、症状の変化に早めに対応する。

職場環境の改善

過度の業務量や長時間労働は、ストレスや疲労の原因となり、燃え尽き症候群やうつ病のリスクを高めます。そこで、医療機関は、言語聴覚士の業務量を適切に調整し、十分な休憩時間や休暇を確保することが必要です。

また、言語聴覚士がリラックスして働けるよう、職場環境の改善も重要です。例えば、休憩スペースの確保や、チームメンバーとのコミュニケーションの機会を増やすなど、ストレスを軽減するための環境整備が求められます。

さらに、言語聴覚士が業務を効率的に進められるよう、業務プロセスの改善や適切な人員配置も検討するべきです。これにより、言語聴覚士は患者へのサポートに集中でき、仕事の質を高めることができます。こうした取り組みを通じて、医療機関や施設は、言語聴覚士が健康的で持続可能な職場環境で働けるよう支援することが求められます。

理想はこのように、職場が変わってくれることなのですが、一人の職員のために組織形態を変えることは難しいです。そして、長期休暇で自分のなかで復帰しにくい状況になっているので、無理に復帰しないで、転職することも選択肢に入れましょう。

転職して新たなスタートをきる

うつ病で休職中の言語聴覚士に転職をオススメする理由は、現在の職場環境がうつ病の原因になっている可能性があるためです。以下に、具体的な理由を示します。

まとめ

言語聴覚士は、言語障害や嚥下障害の患者と向き合い、リハビリやサポートを行う重要な仕事です。しかし、仕事量の多さや感情労働の負担、患者の回復への期待など、さまざまなストレス要因が存在します。こうしたストレスの結果、言語聴覚士は燃え尽き症候群やうつ病に陥るリスクがあります。

仕事量の調整や職場環境の改善など、ストレスを軽減するための対策はありますが、個人のために組織全体を変えることは難しいことも多いです。そのため、うつ病で休職中の言語聴覚士にとって、転職は有効な選択肢となります。新たな職場でリフレッシュし、仕事とプライベートのバランスを取りながら、メンタルヘルスに配慮した環境で働くことで、心身の回復が促進されます。転職によって、ストレスの少ない職場を選ぶことができ、安心して働けるようになります。